文章作成リハビリその4

 好きなものについて語りたい。

 MOSAIC.WAVという音楽ユニットを好きになった。きっかけは好きなアニメの音楽を担当しており気になったというもので、典型的な楽曲から入った形だ。そこから今年の初めごろ、ギャルゲーソングを勝手に祝うというキャッチコピーのアルバムを知り購入することにした。タイトルは『AKIBA-POP И SCRIPTER』。

 この中の一曲を紹介したい。

 購入して8か月だか9か月だかずっと聴いていて、自分にとってとても大切な1曲になった。

『AKIBAのAからはじめよう』

はちゅかの」という成人向け恋愛ゲームのOP曲であるらしく、いわゆる“エロゲソング”である。自分は当ゲームをプレイしていないが、あらすじだけは読んでみることにした。『妄想気味の秋葉系オタクと、オタクを好きになってしまった女の子との学園ラブコメディ』らしい。たぶん「はちゅかの」の構想が練られてから作られた曲だろう(つまり作品を下敷きに曲が作られた)と思うが、自分が聴いていていいなと思うのがこの曲がオタクに恋する女の子側からの視点であることだ。この世に女性視点から描かれる楽曲は星の数ほどあるだろうが、「オタクへ好意を寄せるものの、その恋がうまくいくかな?」と不安と自信がないまぜになっている立場からのオタクソング、なかなかないと言うか、希少とも言ってもいいのではないか。エロゲソングだから成立している曲ともいえる。

 この曲の歌詞からは『オタクの肯定』というメッセージを強く感じていて、そこが一番気に入っているところでもある。例えば「アレなゲーム」をふたりの恋愛の手本にしてしようとするところだったり、「誰かの作ったイメージ」(おそらくアレなゲームの攻略ヒロインのことだろう)に嫉妬した感情を「はちゅたいけん」(初体験)と表現するところだったり。嫉妬した対象であっても、その女の子はオタクの好きなものは否定しない。なぜなら「夢中になれることおかしなことで片づけちゃうのは無理じゃない?」と思っているから。どこまでオタクに寛容なんだと思うが、極めつけはこれである。

「男の子の考える究極の愛の形って女の子じゃわかんないくらいスゴイんでしょ? ちょっとドキドキ」

 自分がこの曲で一番好きなフレーズである。一般的に「男の子の考える究極の愛の形」というワードが出たとき、女の子の場合に比べ「空想的」で「都合よさ」というニュアンスが(自虐的であったとしても)含まれることが多いが、この曲にはそれがない。一切の皮肉なく、この曲の女の子はオタク男子の考える「究極の愛」をすごいものだと思っている。それほどまでにオタク男子に盲目的に恋している。女の子が向ける恋愛感情の大きさがここに最も現れている。そして、これはまぎれもなく『オタクの肯定』なのだ。曲を知り、歌詞を知り、エロゲソングという背景を知り、辿り着くことができた。涙が出そうになった。それほどまでに感情を揺さぶられた一曲だった。これからも大切に聴いていきたい。